事業再生への「道」

デルタ経営コンサルティング
銀行付き合いのヒント

「メインバンク」はもう死語か?


昨今「メインバンク」という言葉がまさに死語になりつつあるように感じます。
例えばファンドであれば、彼らはエクイティを入れたあと、それを回収するために(より積極的には倍にして回収するために)ハンズオンであったり、コンサルを入れたりなど汗を流したり手間を掛けたりします。「投資家として儲ける為なんだから当たり前」のように見えますが、それに比べて果たして銀行さんが「必要な汗」を流しておられるのかと疑問に思ってしまうケースによくぶち当たります。
私の認識としては、銀行の貸出は利ざやが薄く、仮に年間の粗利(営業利益でもないですよ)が元本の1%だとすれば、1億円のロスを取り返すのに100億円貸さないと元が取れません。つまり、論理的には貸し出しを増やすことに力を入れるより、貸した金を確実に回収することに血道を上げるべきだと考えられます。
しかしながら、規模が大きい金融機関や財務内容が比較的良い金融機関などでは、昨今そういった回収の大事さが意識されていないような気がしております(だから第2次不動産バブルが膨張し、恥ずかしいほど見事に弾けている訳ですが)。
日常のモニタリングだけでなく、債務者が抱える構造的な問題、財務面のリスク(だいたい、決算書は粉飾しているのではないのか、など)、経営者のエイジェンシーリスク等、「あの会社、そもそも大丈夫か?」と考え出すと眠れないはずだと思うのですが、転勤のペースの早さや自行が金融危機をとりあえず乗り切ったことに安住しておられるのか、鋭い切り口で議論になるケースが少なくなっているように感じます。
そういった金融パーソンのスタンスと合わせ鏡になるように、メインバンクの存在感が近年ますます薄れてきています。
バンカーという言葉が死語となって久しいですが、メインバンクという言葉ももはや風前の灯です。
経営者の方々は、是非上記情勢を我が事と捉えて頂き、せめて入金と決済は借入残高がある銀行とは別の銀行で行うとか、少しずつでも良いので自衛策を講じて頂きたい、と思います。
とはいえ、時代はまた(えらく周期が早いですが)不良債権が拡大する局面を迎えています。銀行さんは自主的に、もしくは金融庁のご指導のもと、再び債務者との距離を詰めようとしてくれるかもしれません。そのときには、再びメインバンクという言葉が倉庫の奥から取り出されるかもしれませんが、本来はそれが当たり前なのです。メインバンクが踏み込まずに自行の債権回収が図れる訳はなく、その覚悟なくして貸し込むこともまた、戦略不在の象徴でしかないのですから。
経営者の皆様におかれましては、「今が企業にとっての金融危機だ」とご理解頂き、今後のリスクシナリオとその対策を是非早急にご検討頂きたい、と切に思います。

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